相続放棄をした場合の固定資産税の支払い

文責:所長 弁護士 安藤伸介

最終更新日:2025年08月22日

1 固定資産税の支払い義務者は?

 固定資産税は、不動産を所有する人に課せられる税金です。

 所有者が複数の場合、すなわち不動産が共有になっている場合でも、各共有者は、連帯して固定資産税を支払わなければなりません(私の持分は10分の1だから10分の1の金額しか支払わない、と役所に言うことはできない、ということです)。

2 相続が発生した場合

 不動産を所有する人が死亡した場合、相続人はその不動産の所有権を承継することになりますので、固定資産税も負担しなければならなくなります。

 なお、厳密に区別すると、不動産の所有者が死亡した時点で既に発生していた固定資産税の納付義務については、納付義務そのものを承継し、不動産の所有者が死亡した時点でまだ発生していない固定資産税については、不動産の所有権を承継したことを原因として相続人が負担しなければならない税金ということになります(後者は、例えば売買で不動産を取得した場合と同じです)。

3 相続放棄した場合の固定資産税の支払い

 相続放棄を行うと、その相続については初めから相続人とならなかったものとみなされます。

 つまり、相続人ではないのですから、被相続人の権利義務を承継することもないということになります。

 それゆえ、相続放棄を行った相続人は、相続が発生した時点(被相続人が死亡した時点)で既に発生していた固定資産税の支払い義務を承継することはないことになります。

 それでは、相続発生後に発生した固定資産税はどうなるのでしょうか。

 この点、固定資産税は、不動産の所有者に課せられる税金です。

 つまり、不動産の所有者でない人(賃借人など)に課せられることはありません。

 相続放棄を行うと、相続放棄を行った相続人は、その相続に関しては、「初めから」相続人とならなかったものみなされます。

 つまり、相続放棄を行うと、被相続人の不動産について一度も所有者になったことはないということになりますので、固定資産税の納付義務を負うこともない、ということになります。

 以上をまとめますと、相続放棄を行った場合は、被相続人が所有していた不動産について発生した固定資産税は一切支払う必要がない、ということになります。

PageTop