山の相続放棄について
1 山だけを相続放棄することはできない 2 山林相続における管理負担と潜在的リスク 3 相続放棄の熟慮期間と判断に必要な調査 4 他の親族に相続が移る点にも注意 5 山を手放すための方法 6 山の相続放棄は慎重な判断を
1 山だけを相続放棄することはできない
相続放棄は「特定の財産だけ」を放棄することはできません。
つまり、一度相続放棄をすると、その人はすべての財産(プラスの財産もマイナスの財産も)を一切相続できなくなります。
⑴ 相続放棄が有効なケース
・相続財産が山だけで、他に財産がない場合
・山以外に借金などのマイナス財産しかない場合
このような場合は、相続放棄をしても問題ありません。
⑵ 相続放棄に注意が必要なケース
一方で、山以外に預貯金や自宅などのプラスの財産がある場合には注意が必要です。
相続放棄をしてしまうと、それらのプラスの財産も一切相続できなくなります。
そのため、「山はいらないけど預貯金は相続したい」というような選択はできません。
2 山林相続における管理負担と潜在的リスク
山林の相続では、境界標の欠落や現地確認の困難さから、隣接土地所有者との間で境界紛争に発展する可能性も否定できません。
固定資産税の負担が軽微であっても、倒木や土砂災害の防止といった管理上の責任が事実上問題となることもあります。
このように山林は経済的価値の有無にかかわらず、権利関係および管理負担の観点から慎重な検討が求められます。
3 相続放棄の熟慮期間と判断に必要な調査
相続放棄は、相続の開始および自己が相続人であることを知った時から3か月以内に行う必要があります。
この期間は熟慮期間とされ、相続するか放棄するかを検討するために法律上認められた猶予期間です。
ただし、山林を含む不動産が存在する場合には、登記関係や現地状況の調査に時間を要し、短期間での判断が困難となることがあります。
このような事情がある場合には、家庭裁判所に申立てを行うことで熟慮期間の伸長が認められる場合があります。
参考リンク:裁判所・相続の承認又は放棄の期間の伸長
そのため、相続開始後は速やかに財産関係の調査を開始し、放棄の可否判断に必要な情報を整理することが重要です。
4 他の親族に相続が移る点にも注意
相続放棄をすると、その人は最初から相続人ではなかったものとみなされます。
すると、次の順位の親族が新たに相続人となるため、結果的に別の親族が山を相続してしまう場合があります。
<具体例>
例えば、夫が亡くなり、妻・長男・次男の3人が相続人だった場合を考えます。
長男と次男が相続放棄をすると、夫の親や兄弟姉妹などが次の順位の相続人として繰り上がり、妻と一緒に相続することになります。
この場合、夫の親や兄弟姉妹も山を相続したくないのであれば、それぞれが相続放棄の手続きを取る必要があります。
5 山を手放すための方法
「山を相続放棄できない」「他の親族も放棄してしまった」などの事情がある場合でも、山を手放す方法はいくつかあります。
⑴ 相続土地国庫帰属制度を利用する
令和5年4月27日にスタートした新しい制度で、一定の条件を満たすことで、相続した土地を国に引き取ってもらうことが可能です。
詳しくは、法務省の公式サイト「相続土地国庫帰属制度について」をご参照ください。
参考リンク:法務省・相続土地国庫帰属制度について
⑵ 贈与や寄付を検討する
現実的な選択肢としては難しい面もありますが、隣接する山の所有者に譲渡したり、自治体などへ寄付したりする方法も考えられます。
6 山の相続放棄は慎重な判断を
山の相続放棄は可能ですが、「山だけを放棄する」ことはできません。
また、他の親族に相続が移る可能性もあるため、放棄の前に家族でよく話し合うことが大切です。
相続放棄や国庫帰属制度の手続きは複雑なため、迷ったときは相続に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士法人心 つくば法律事務所では、そのような山の相続・相続放棄に関するご相談も受け付けておりますので、お困りの際には、お気軽にご相談ください。



























